佐賀県鳥栖市

地元雇用・地元ワーカー特色あるサテライトオフィス【取材日:平成30年10月11日】

人口増加中の鳥栖で、多様な働き方の良さを広めて女性や若者の就業を支援

九州最古の駅の一つである鳥栖駅の駅舎は、その時代を感じさせる。

佐賀県鳥栖市は、九州を南北・東西に走る国道・高速道路や鉄道の交点にあたり、交通の利便性が高く、物流業や製造業の進出が盛んな街です。
現在も人口が増えていて(平成30年10月現在の人口は約7万3千人)、民間経済誌が毎年発表する住みよさランキングでは、常に九州地方上位にランクインしています。

平成27年10月、平成26年度補正予算『ふるさとテレワーク推進のための地域実証事業』を活用して、『さがんみらいテレワークセンター鳥栖』(以下、テレワークセンター)が開設されました。市内の中心商店街で空き店舗になっていた場所を改装したそうです。
主体となったのは、株式会社パソナテック(ITやエンジニアリングの分野における人材紹介や人材派遣が主事業)や鳥栖市、佐賀県などから成るコンソーシアム。

今回はこちらのテレワークセンターを訪問し、パソナテック西日本支社の松木英史氏と、鳥栖市 商工振興課の倉本晶子氏からお話を伺いました。

1. テレワークセンター開設が地元雇用やテレワーク制度を促進

本通町は道路沿いに店舗が並び活気がある。
テレワークセンターのある本通町の町並み

テレワークセンター入り口は施設名の書かれた自動ドア。
テレワークセンター入り口

まず、『さがんみらいテレワークセンター鳥栖』を開設した経緯についてお聞かせください。

松木:パソナテックは、ふるさとテレワーク事業実施の以前より、岡山県や松山市などの自治体から、女性やひとり親の在宅就業を支援する事業を受託してきた経験があります。
これらの事業について佐賀県庁の方にも興味を持っていただいたことがきっかけで、同様の事業を佐賀県でも行うことになり、ふるさとテレワークを活用しました。交通の利便性などが理由で場所は鳥栖市に決まりました。

インタビューに応じていただいたパソナテック西日本支社の松木さん
パソナテック西日本支社 松木さん

テレワークセンターの開設にともない、社員の方々も鳥栖に来られたのですか?

松木:パソナテックの社員3名が鳥栖に移住したんです。みんな出身地や出身大学が九州の社員たちで、テレワークセンター運営マネージャーやエンジニアとして鳥栖に配属されました。
現在は当時の3名は鳥栖では働いていませんが、今鳥栖で働く4名も、ふるさとテレワーク事業をきっかけに入社した社員たちです。鳥栖市や佐賀県の出身者も1名ずついて、数こそ大きくはないですが、ふるさとテレワークをきっかけに始まった取組を地元雇用にもつなげられています。

テレワークセンター内は壁沿いにデスクが配置され、中央には円卓もある。
テレワークセンターの様子

松木:今いる女性社員の一人は、エンジニアとしての復職を望んで求人に応募してくれました。テレワークセンターの設立目的として、地元にいる元エンジニアや、女性やシニア世代の就業の促進もあったので、彼女のような社員に鳥栖で働いてもらえることは喜ばしいことですね。
 
さらに、ふるさとテレワーク事業期間中、インターンとして事業を熱心にサポートしてくれた佐賀大学の学生がいたのですが、彼は卒業後当社に入社してくれました。そして彼の入社以降、佐賀大学の学生が毎年エンジニアとして当社に入社しているんです。九州全体からのエントリーも増えました。おそらく、本事業について説明会などを通して大学の学生や広報課に伝えるなかで、当社への関心を持ってもらえたのだと思います。
 
今年度(平成30年度)も佐賀大学の卒業生が1名、エンジニア職として新卒で当社に入り、鳥栖オフィスも定期的に訪れています。

ふるさとテレワーク事業の実施中は、パソナテック以外の企業がテレワークを行うこともありましたか?

松木:福岡市に本社がある通信事業者の株式会社QTnetが、テレワーク制度を社内で整備したい考えをお持ちだったということで、平成27年12月から数ヶ月間ほどテレワークを試験運用されました。QTnetの社員の方々が利用できるスペースをテレワークセンター鳥栖の中に設けたんです。
全社導入に先立ち、鳥栖近郊在住の社員の方々がサテライトオフィスでテレワークを試行し、その有効性や課題の整理をされたと聞いています。実際、テレワークの有効性が確認できたということで、QTnetはその後、平成28年4月からテレワーク勤務制度を取り入れられていますね。

2. プログラミング講座やイベントで女性や若者の就業を促進

「プログラミング体験講座」や「RPA講座」のチラシ
平成30年に開催した講座のチラシ。Facebookページでも情報を発信している

テレワークセンターでは、地元の方々に向けて他にどんな取組をしていますか?

松木:地元の皆さんに向けたプログラミング講座や新しい働き方講座を開講しています。地元の皆さんのスキルアップや、テレワーカー人材の育成が狙いです。参加者は30-40代の女性が多い印象ですね。
前回は今年(平成30年)1月頃から講座を開きました。実はその時の参加者のお一人は、当社が福岡市で開いた別の講座にも参加して、最終的に当社から紹介した企業への就業を決めてくださったんです。
 
この方のように就業まではいかなくても、講座をきっかけに当社のクラウドソーシングサービスを利用いただけるケースもあります。やはり地域経済への貢献という点で、また当社サービスを利用いただけるという点でも嬉しいですね。

インタビューに応じていただいた鳥栖市商工振興課の倉本さん
鳥栖市商工振興課 倉本さん

倉本:ちょうど昨日も、鳥栖市からの委託事業として『新しい働き方講座』を開いていただき、在宅ワークやクラウドソーシングについて紹介したんです。お子さんのいる女性にも来てほしかったので、無料託児サービスも用意しました。実際、参加者は女性が多かったです。
 
これらの講座やイベントには、鳥栖市民の方がIT関連の知識や仕事にふれる機会を増やす狙いもあります。鳥栖市は福岡市の通勤圏内なので、福岡でますます増えつつあるITの仕事を知ることはやはり重要だと認識しています。
 
イベントの周知活動はパソナテックが運営しているSNSや、市によるチラシ配布を通じて行っています。今年(平成30年)は小さなお子さんを持つ母親の就業支援を考え、市内に10箇所ある子育て支援センターにチラシを置きました。

3. 新しい働き方の有効性を、企業と人材の双方に伝えたい

松木さんはテレワークを顧客企業に向けて紹介されることもあると思いますが、テレワーク導入の課題はどこにあると感じますか?

松木:テレワークの文化はまだ十分には浸透していないと感じています。背景にあるのは、同じオフィスにいない社員に対する人事評価や時間管理の難しさや、オフィス外作業におけるセキュリティ確保の問題です。
 
当社はコア事業としてエンジニア人材の派遣事業や委託事業で実績を積んできたので、開発業務を国内の地方都市の企業などに外注するニアショア開発や、時短派遣、在宅派遣の活用検討もお客様にも勧めています。特に派遣契約のもと在宅で勤務する在宅派遣は関東を中心に増えているので、九州でもこれから普及させたいと思います。
 
ただ、テレワークや在宅・時短という働き方は、雇用側だけでなく、働く側にも十分に認知されていない印象があります。活用できる可能性のある人材層にピンポイントで訴求するのも難しいので、今はプログラミング講座や新しい働き方講座などの取組を地道に続け、認知を広めるのが重要です。

4. にぎわう鳥栖の街で、市民のしごとを多方面から支援

5番ホームから見る、留置されている3両編成の電車。
鳥栖駅ホームから

テレワークを含めて鳥栖市で働くことについて、市からはどんな支援をしていますか?

倉本:近年、市街地の空き地開発などを通して市内のお店や事務所が増えているので、鳥栖市での経済活動をサポートするために、起業・経営支援の相談窓口『鳥栖ビズ』を鳥栖駅すぐ近くのサンメッセ鳥栖に設置しています。
新たに創業や事業展開を考えている中小企業者の相談に対して、課題解決のアドバイスや支援制度の紹介を無料で行う窓口です。

サンメッセ鳥栖はガラスを多く使用したモダンな建物。
サンメッセ鳥栖。鳥栖駅からすぐ近く

サンメッセ鳥栖内「鳥栖市産業支援相談室」入り口。近くにはパンフレットが置かれている。
サンメッセ鳥栖内の『鳥栖ビズ』(鳥栖市産業支援相談室)

経済の活発化に並行して、鳥栖市では現在も、新興住宅地に住むファミリー層を中心に人口が増えていますし、最近では、サガン鳥栖のホームゲームに1万5千人以上の観客が集まることもよくあるんです。元スペイン代表のフェルナンド・トーレス選手が7月に入団したこともあって(笑)。
 
にぎわいを増すこの環境のなかで、鳥栖での多様な働き方を市からも促進していきたいですね。

サガン鳥栖のホームグラウンド「ベストアメニティスタジアム」外観。スタンド席を配置するため、外壁が外に開いているように見える。
ベストアメニティスタジアム。鳥栖駅からすぐ近く

お問合せ先

株式会社パソナテック:https://www.pasonatech.co.jp/
鳥栖市:https://www.city.tosu.lg.jp/

(参考)平成26年度補正予算地域実証事業の取組内容はこちら(PDFファイル)