京都府京丹後市

特色あるサテライトオフィス【取材日:平成30年10月18日】

テレワークが繋いだイノベーション。ドローンによる地域活性

山に近い漁港には数隻の漁船が停泊している。

京都府の最北部に位置し、日本海に面している京丹後市。丹後半島の豊かな自然に囲まれ、古代より大陸との交流の窓口として栄えたこの地は「もうひとつの京都」と呼ばれています。その丹後地域の資料や特産品の展示のほか、情報発信の場でもある「丹後地域地場産業振興センター」で平成27年、テレワークセンターが設置されました。

新たなワークスタイルとしてテレワークを推進した京丹後市商工振興課の高橋尚義氏と、設置に尽力された明治大学の阪井和男氏、株式会社NTTPCコミュニケーションズの石毛俊治氏、原田幸顕氏、MMT企画の藤澤政隆氏に、設置の経緯やこれまでの成果、今後の課題についてお伺いしました。

円卓に集まるインタビューに応じていただいたみなさま
左から高橋さん、原田さん、藤澤さん、石毛さん、阪井さん

1. 市の経済戦略と国の事業がマッチ 大学も協力してテレワークセンターを設置

まずは京丹後市にテレワークセンターを設置した経緯についてお聞かせください。

高橋(京丹後市):京丹後市では体系的に産業政策を図ろうと、平成25年度に京丹後市新経済戦略を策定し、今後の地域経済活性化に向けての取組として、都市部の企業が京丹後をフィールドに事業を進められるように誘致して、地域に入っていただくテレワークを進める計画がスタートしました。

インタビューに応じていただいた京丹後市商工振興課の高橋さん
京丹後市商工振興課 高橋さん

セミナーを開催するなど計画を推進していく中で、京丹後市の考えとマッチする総務省の平成26年度補正予算『ふるさとテレワーク推進のための地域実証事業』を知り、事業の情報をお持ちだったNTTPCの石毛さんにご協力いただき、明治大学サービス創新研究所、株式会社アーティフィス、株式会社ブリリアントサービス、公益財団法人丹後地域地場産業振興センター、京丹後市でコンソーシアムを組みまして、丹後地域地場産業振興センターにテレワークセンターを設置して事業に取り組みました。

白い壁が特徴の丹後地域地場産業振興センター
地域の情報発信の拠点でもある『丹後地域地場産業振興センター』

地酒類を販売している丹後地域地場産業振興センターの1階の様子
1Fでは丹後地域の特産品が販売されている。「丹後ちりめん」の染色も体験できる

京丹後市にはパソコンを持ち込んで作業できるようなスペースが無く、車の中で仕事をしている人もいるような状況でした。テレワークセンターを設置することによって、仕事のできる場所を提供できたうえ、地域の方がこのような施設の利便性を知るきっかけにもなりました。
実際にここを設置してから、民間の方々の取組で古民家を改修したシェアオフィスも出来ているんですよ。

2. 裸足でリラックス! 人工芝が敷き詰められたオフィス

テレワークセンター設置後の利用状況はいかがでしょうか?

高橋:初年度はコンソーシアムに参加したアーティフィス、ブリリアントサービスを含め、4社に出張という形態で3カ月ほど利用いただきました。落ち着いた生活環境の中、集中して業務を行えたと各企業にも高い評価をいただき、市としてもテレワークの有効性を確認しています。

インタビューに応じていただいたNTTPCコミュニケーションズの石毛さん
NTTPCコミュニケーションズ 石毛さん

石毛:都市部のオフィスでは頻繁に会議があったりして、なかなか集中するのが難しいですからね。体感ですが、都市部の一日分の仕事量をこちらでは半日でこなすことができると思います。通勤時間が少ないし、仕事中の割り込みも無いので業務が効率的に行えたというのは、参加企業のみなさんも言っていましたね。

人工芝が敷かれたフロアには白い円卓が並ぶ
テレワークセンター内に企業間で交流ができるスペースを設置

床に人工芝が敷き詰められているのは珍しいですね。

石毛:せっかく都市部から来るのに、普通のオフィスと同じではつまらないですよね。みなさん裸足で作業をされたりもしていて、リラックスできると評判も良かったんですよ。オフィス部分も可動式のテント型スペースになっていて、利用企業の数によって位置を調整できるんです。壁はホワイトボードで、そのまま会議にも使えます。
コワーキングスペースを設け、企業間でコミュニケーションが取れるようにもしています。参加企業間で連携したビジネスについて話し合ったりもしていましたし、初年度の参加4社はここを利用しなくなった今でも繋がっているそうです。

白い壁に囲まれ、パソコンデスクが配置された5人収容のスペース
壁はすべてホワイトボードですぐに会議が可能

高橋:お試しで開放していた時期もありまして、東京都内のイベントで京丹後市がテレワークを推進していると知った出身者が見学に来られて、勤務していた会社の許可を取り家族でUターンしてきた例もあるんですよ。

3. テレワークから新たな地域ビジネスを創出

テレワークセンターを運営していく中で、これから改善していきたい課題等があればお聞かせください。

高橋:落ち着いた生活環境の中で仕事をすることで、働く方々の心の休養は得られると思うのですが、収益が上がるわけではありませんので、オフィスの維持費や交通費など企業の負担が大きくなります。単に都市部の仕事を地方でするだけではなく、行った先でビジネスをすることまであわせてやらないと、企業の収益性・持続性といった面から厳しいのではないでしょうか。
この地域で今までやってきたのとは違う新しい事業を起こすことができると、企業にとっても拠点を置いた意味が出てきますので、『京丹後市サテライトオフィス設置等支援補助金』という補助金を創設して、入居した企業が地域の仕事を受けられるように市としてサポートしています。今後はこういった形でテレワークに取り組んでいくべきだと考えています。

インタビューに応じていただいた明治大学の阪井教授
明治大学 阪井教授

阪井:京丹後市の特性を生かして、他の地域にないイノベーションの拠点にできるんじゃないかと話しています。
鍵となる何かが京丹後市に集積し、あらゆる分野についてのイノベーションの動きが京丹後市を中心に起こるというイメージです。その候補のひとつとして挙がったのがドローンなんです。

4. 充実したフィールドトライアル環境を活かしたドローンによる地域づくり

インタビューに応じていただいたMMT企画の藤澤さん
MMT企画 藤澤さん

藤澤:このテレワークセンターには現在、ドローンを活用したビジネスをしている株式会社テララボさんが入っています。京丹後市には広場がたくさんあり、航空機の航路も少ないからドローンが飛ばしやすいんです。京丹後市もとても理解がありますし、人口密集地でもないため規制もかかりません。理想的なトライアル環境といえます。

ドローンで撮影した動画の一画面。手前に棚田、奥には日本海。
ドローンで撮影した動画では四季折々の京丹後市の風景を撮影。動画ページはこちら

京丹後市にはイノシシやシカが多く鳥獣被害が問題になっています。若い世代の猟師も増えていますが、経験が少なく罠が上手く仕掛けられなかったりして、被害が抑えきれないんですね。そこで赤外線カメラを積んだドローンを飛ばして、効果的に罠を仕掛けられる位置を調査しています。

京都丹後鉄道網野駅周辺は住宅地があり、すく後ろには山がそびえる
『アミティ丹後』最寄りの網野駅周辺。住宅街のすぐ後ろには山が広がる

テララボさんは名古屋の会社ですが都市部ではなかなかドローンを飛ばしにくい。京丹後市でトライアルもでき、新しい仕事も行政からいただける。その活動を見た地場の企業もどんどん参入していくという流れを生み出せればいいですね。

高橋:実際にドローンの教習所ができたりもしていますし、定常化しそうな雰囲気も出てきています。

藤澤:もう1社、株式会社テイコクさんもテレワークセンターに入っています。ここは道路などのインフラや防災のために調査や設計、測量を行う会社でして、ドローンで測量したデータをコンサルティングに活用しています。最近は台風の被害が多いですが、崩落した土量もドローン計測できるそうです。

高橋:京丹後市でも台風の被害が毎年続いていて、2年前に被害が出たところの公共工事がいまだにできていません。高いドローン技術を持ったテイコクさんのようなテレワーク企業の進出による状況の改善を期待しています。

阪井:テレワークセンター設置初年度からいろいろと種をまいてきて、具体的にドローンの話が繋がって花開いてきました。施設でテレワークをしてもらうためだけに企業を誘致するのではなく、事業が広がって将来の事業展開に繋がるような夢のあることをやれましたね。

石毛:地方が動くきっかけとなる事業ですよね。そのきっかけを無駄にするか実のあるものにするかは地方次第ですが、京丹後市はうまく実を結べたと思います。

高橋:ふるさとテレワーク事業から始まり、京丹後市ならではの活用方法を模索していく中で、ドローンを始め新たな動きに繋がってきたことを実感しています。この動きを加速させ、イノベーションを起こす場としてこの施設を活用していきたいですね。

お問合せ先

丹後地域地場産業振興センター アミティ丹後
http://www.tango.jibasan.jp/ 0772-72-5261
京丹後市商工振興課
https://www.city.kyotango.lg.jp/ 0772-69-0440

(参考)平成26年度補正予算地域実証事業の取組内容はこちら(PDFファイル)