兵庫県丹波市

【取材日:平成30年1月28日】

古民家をオフィスへ。住と職の充実を自然豊かな丹波で叶える

改修工事を受け、モダンな雰囲気をも醸す「衣川會舘」
丹波市佐治の衣川邸は、空き家サークル「佐治倶楽部」のリードによる改修工事を経た平成28年度から「衣川會舘(きぬがわかいかん)」の名称に改められ、月イチで衣壱(キヌイチ※1)というイベントが行われています。「平成28年度予算ふるさとテレワーク推進事業」を活用し、平成29年1月には衣川會舘の2階部分にコワーキングスペースが設けられました。

移住者と地域住民がより親交を深め、地域を活性化していくには、どうしたらよいのか。丹波型テレワーク推進事業について、本事業の中心メンバーである丹波市住まいづくり課・課長の前川康幸氏、ホームワーカーズコミュニティ株式会社の阪田大輔氏、佐治倶楽部の出町慎氏の3名から、「行政」「運営」「管理」というそれぞれの立場から現状と今後について語ってもらいました。

目次

1. 地域住民と移住者の交流の場がすでに存在した

2. リアルな体験を通し、テレワーカーと地域との交流が生まれる

3. あらゆる用途に利用できるコワーキングスペース

4. 管理者から見える丹波型テレワークの利点と課題

5.「行政」「運営」「管理」が一体となってテレワーカーをサポートしていく

6. 本事例についてのお問合せ先

1. 地域住民と移住者の交流の場がすでに存在した

屋内で行列をなすほど盛況しているイベント「キヌイチ」
▲毎月第4日曜日に衣川會舘の1階スペースで、丹波市内で人気のあるさまざまなパンを購入できるイベント「衣壱 (キヌイチ:以下カタカナ表記)」(※1)が行われ、写真のように毎回列を作るほどにぎわっています。

―丹波市とホームワーカーズコミュニティがコンソーシアムを形成し、ふるさとテレワーク推進事業に参加されたいきさつについて教えてください。

前川氏:丹波市では平成12年から人口が減少しており、最近では毎月0.1%ずつ落ち込んでいることがわかっています。特に社会で活躍できる年齢層が少なく、外部から新たな人材を誘致することが早急な課題と考えています。
市としては、地域住民と移住者の交流場所が必要と考え、平成27年11月にホームワーカーズコミュニティ株式会社さんと賛同いただける地元企業とともに「お試しテレワーク」と題したテレワーク推進プロジェクトを立ち上げ、テレワーカーさんに働く場所と住居を無償で提供しました。このお試しテレワークは今も続けています。

インタビューを受けるホームワーカーズコミュニティ株式会社の阪田氏と丹波市住まいづくり課の前川課長
▲ホームワーカーズコミュニティ株式会社の阪田氏(左)と丹波市住まいづくり課の前川課長(右)

阪田氏:ホームワーカーズコミュニティ株式会社は東京で職業紹介事業を行っております。お試しテレワークの期間中に、登録しているテレワーカーさんに参加を依頼し、実際に東京や宝塚から丹波市へ向かっていただきました。この時に、参加者と丹波市の双方に意味のある交流ができたと手応えを感じました。理由として、キヌイチの開催やさまざまなイベントを通じた地域住民と移住者との交流がすでにあり、新参者を受け入れる体制が整っていたことが挙げられます。
次の手として衣川會舘の2階に新たなコワーキングスペースを作れば、仕事としても新たな交流が生まれるなど相乗効果が期待できると考え、総務省の平成28年度予算ふるさとテレワーク推進事業に応募しました。

2. リアルな体験を通し、テレワーカーと地域との交流が生まれる

移住者の方と衣川會舘の前で談笑する出町氏。
▲出町氏(中)を中心とする、衣川會舘を支える移住者の方々

―現在、お試しテレワークを実施中とのことですが、実際に丹波で移住体験をされた方々の反応はいかがでしたか?

前川氏:皆さん「また来たい」とおっしゃっています。体験をされた方々が自身のブログやSNSなどで丹波市の魅力を発信してくださっており、とてもありがたく思っています。滞在中には地元のぼたん鍋や丹波三宝(丹波栗・丹波大納言小豆・丹波黒大豆)など、土地ならではのおいしい料理も堪能していただいたようです。

出町氏:参加された方々がこの街を気に入っていただけることは意味のあることだと思っています。十分な利益を生み出す事業につなげるにはまだ時間を要しますが、認知度を広めたりリピーターを増やしたりという意味において、現在は重要なステップと考えています。

3. あらゆる用途に利用できるコワーキングスペース

2階に設置されたコワーキングスペース。
▲吹き抜けの天井と趣のある梁。階下にいる人の気配に、安心感や心地良さを求めるワーカーも少なくない

―コワーキングスペースはとても開放感がありますね。

阪田氏:吹き抜けになっていて、1階の雰囲気を楽しめます。会議のできる机や個室もあり、さまざまなニーズに対応できる空間です。

落ち着いた雰囲気の中会議ができる。
▲テレビモニターのある会議スペース

集中して仕事ができる個室もまた落ち着いた雰囲気がある。
▲施錠できる個室

前川氏:衣川邸はもともと反物を扱う商家だったと聞いています。天井には反物を下ろすための滑車が残り、とても情緒のある空間を作っています。

コワーキングスペースを利用していた兵庫県但馬技術大学校の職員教育専門員の富田満氏
▲コワーキングスペースを利用していた兵庫県但馬技術大学校の職員教育専門員の富田満氏

―富田さんはコワーキングスペースをどのくらいの頻度で利用されていますか?

富田氏:平成29年4月に行われたオープニングイベントに参加してから、キヌイチに合わせて来ているので月に1回くらいです。

―ここを利用する理由は何でしょう?

富田氏:キヌイチに参加した後に、1階の雰囲気を楽しみながらゆっくりできるからです。誰かと交流するのはもちろん、仕事にも集中できます。

―コワーキングスペースの利用で困ったことはありますか?

富田氏:仕事ができて、会議ができて、プリンターも使えて、困ることは一つもありません。利用の仕方によるとは思いますが。

伝統的な雰囲気の中にモダンシェルフがうまく調和している。
▲個々の仕事に集中できるようパーテーションの役割をしたシェルフが置かれている

―ここでは具体的にどういった作業をされているのでしょう?

富田氏:仕事の資料を作ったり、講師とメールで連絡を取り合ったりしています。仕事をするために来るというよりは、この場所に来るのが目的なので、やっておこうかな、という仕事があればそれを消化するという感じです。

―今後、期待されることは何でしょうか?

富田氏:キヌイチでは遠方の方も来られていますし、すでに地元との交流の場になっているので、このスペースを中心として、新たな交流や仕事が生まれてくれることを期待しています。

4. 管理者から見える丹波型テレワークの利点と課題

笑顔でインタビューを受ける出町氏
▲関西大学在学中に佐治と関わりを持ち、平成25年に移住した出町氏

―出町さんは奈良からこちらに移住されたとお聞きしました。出町さんから見て、ふるさとテレワークとして丹波に住む利点を教えてください。

出町氏:今の時代、どこにいても世界とつながるので、イマジネーションの沸く場所に身を置くことが、仕事において重要だと思います。その選択肢として丹波はとても良い環境ですよ。川、山、農作物など、あらゆるものが仕事の題材になるし、季節の移り変わりを感じることがクリエイティブな作業の刺激になります。また、ここでは「住」と「職」が常に近い距離にあり、普段の生活が仕事につながり、都会にはない仕事観を得られます。大阪からも1時間30分ほどなので、暮らす上での不便さはありません。

―コワーキングスペースの利用料金を教えてください。

1時間200円、半日(4時間)500円、1日(8時間)1,000円です。Wi-Fiスキャン可能なコピー機、鍵付きロッカー、ライブラリースペース、キッチンスペース(利用料は別途必要)が利用可能です。毎週木曜日は必ず開けていますが、その他は不定期です。予約の必要はありませんが、利用の際は事前に問い合わせいただけるとスムーズです。

―管理者として抱えている課題はどんなことですか?

出町氏:人手が足りなく、コワーキングスペースを常に開放しておけないことです。僕が事務所にいるときはいいのですが、外出時は難しくて。地域の人も寄り付きにくくなってしまうので、なるべく開けるようにしています。
コワーキングスペースを利用していただいているテレワーカーさんに、利用料を免除する代わりに衣川會舘の管理を手伝ってもらうなど、常にオープンにしておくための新しい展開を、来年度から進めたいと思っています。

5. 「行政」「運営」「管理」が一体となってテレワーカーをサポートしていく

机を挟み、会話する出町氏と阪田氏。
▲出町氏(左)と阪田氏(右)

―最後に、テレワーカーや企業の方に向けてメッセージをお願いします。

出町氏:この場所は降って湧いたような場所ではなく、地域のつながりや、仕事につながる資源などを10年以上育んできたおかげで、今の形になっています。つながりを重ねていることが強みでもあり、新たに来られるテレワーカーさんのセンスや職能をさらに重ねてもらうことで、より面白いことがスピード感を持って動くのではないかと期待しています。地域とつながりたいという方にぜひ利用していただけたらと思います。仕事だけでなく、トータルで暮らしをサポートする事業を展開し、より滞在しやすい環境を作っていけたらと思っています。

阪田氏:地方にはチャンスと資源がたくさんあり、それを生かすのは早ければ早い方がいいと思います。弊社としてもコワーキングスペースを利用する方に仕事を依頼し、その可能性を形にできればと思っています。この取組みについてはSNSなどでも情報を発信していますので、ご覧いただいた上でまずはお試しテレワークを体験していただければと思います。

お問合せ先
衣川會舘 電話 0795-86-7078

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(参考)平成28年度予算補助事業の取組内容はこちら