北海道ニセコ町

【取材日:平成30年1月12日】

かつてのでんぷん工場が、人と人とをつなぐテレワークオフィスに

雪深いニセコ町にあるニセコ中央倉庫群
世界でも有数の観光リゾート地として、国内のみならず海外からも多くの観光客が訪れる北海道ニセコ町。ここに、旧でんぷん工場をよみがえらせたテレワーク拠点が設けられています。木の温もりあふれる1階の「屋内交流空間」は、人や企業との新しい出会いと交流を育み、新たな可能性を広げることを目的にしたフリースペース。2階の「作業室」にはテレワーク設備が整えられています。平成30年1月、最先端のテレワーク環境をニセコに起こした取組について、『NPO法人ニセコ倉庫邑(むら)』理事でもあるニセコ中央倉庫群館長の向田薫氏にお話を伺いました。

目次

1. 最先端のICT環境を整備した、地域のコミュニティスペース

2. 古くて新しい旧でんぷん工場のシンボル「製粉機」の一部をディスプレイ

3. 交流の場で何かを仕掛けたい、を発端にテレワーク事業に参加

4. ニセコのファンを増やす!都心とニセコをつなぐ新しい試み

5. 本事例についてのお問合せ先

1. 最先端のICT環境を整備した、地域のコミュニティスペース

―ニセコ町は国内外から注目が集まっている土地と聞いていますが。

馬渕氏:ニセコ町には、一年を通じて多くの長期滞在外国人観光客が訪れています。こういった方々が滞在中に仕事をする際、これまではWi-Fi環境のある公共の施設でPCを持参して行っているという状況でした。どうにか、もっと快適なワーク環境を整えることができないかと、役場でも考えていました。
その一方で、ニセコ駅前の「ニセコ中央倉庫群」において倉庫を改修し、地域のコミュニティ施設を作るプロジェクトが始まりました。そこでこの場所にテレワーク機能を付加してみてはどうかと。観光客だけでなく、道央へ仕事でいらした方にもニセコへ立ち寄っていただき、自然豊かな環境に触れていただけたらということで、このふるさとテレワーク推進事業に参加しました。

内部は広々とし、複数人掛けのデスクが設置されている。

―倉庫を利用したテレワーク拠点というのは、全国でもなかなか珍しいのではないでしょうか。

馬渕氏:そうですね、倉庫を事務所として利用する発想より先に、寒いのではないか、というイメージを抱くのかもしれません。

―ここは暖房設備も整っていて快適ですね。

向田氏:はい、開放感がある建物なので暖まりにくいと思われそうですが、最新のストーブやサーキュレーターを完備してあり、寒い時期も暖かく過ごせます。
逆に真夏はクーラーがなくても快適な場合がほとんどです。ニセコは国内でも有名な避暑地でもあり、集中して作業をするにはとても適した環境ではないかと思います。

2. 古くて新しい旧でんぷん工場のシンボル「製粉機」の一部をディスプレイ

この施設の前身であるでんぷん工場と、製粉機の模型が飾られている。
▲奥が旧でんぷん工場、手前は製粉機の縮尺模型

―いつ頃この倉庫は建てられたんですか?

向田氏:ここは昭和32年に建てられ、以前はでんぷん工場として利用されていました。
大正から昭和にかけてニセコが最も繁栄していた頃、この付近一帯には多くの倉庫やでんぷん工場が建ち並んでいたんです。運搬ルートが発達したため、不要となった倉庫は次々と取り壊され、今ではここを含めて6棟を残すのみとなりました。

かつてニセコが繁栄していた頃の象徴を残していこうというプロジェクトが、平成23年から5カ年計画で動き出し、これらの倉庫を総称して「ニセコ中央倉庫群」と呼ばれていました。その中で私は新たに設立された『NPO法人ニセコ倉庫邑(むら)』の理事の一人として、また館長として「旧でんぷん工場」と、2軒隣の「1号倉庫」、そして「広場」の管理・運営をさせていただいています。」(向田氏)

―建物に入ってまず目を引くのが、天井のはりに設置されてある大きな機械。重厚感のある趣が建物の雰囲気になじんでいますが、一体どういったものでしょうか。

内部には、でんぷん工場時代に使用されていたでんぷん製粉機の一部が天井裏に残されており、現在も見ることができる。
▲でんぷん製粉機の実物の一部

向田氏:これは当時、実際に使われていたでんぷん製粉機の一部になります。この工場では、じゃがいもからできる未粉(みふん)でんぷんをこの製粉機にかけて、でんぷん粉を製造していました。
昭和40年代頃からはこういった製粉機は使われなくなりました。ニセコの歴史を後世に伝えていくという意味で、実物を残せたのは良かったと思っています。

3. 交流の場で何かを仕掛けたい、を発端にテレワーク事業に参加

―ふるさとテレワークの推進事業をニセコ町で展開していくことに決めたきっかけを教えてください。

打ち合わせスペースも用意され、大型のモニターや複合機も完備されている。
馬渕氏:5カ年計画を経て平成28年3月にニセコ中央倉庫群の全形がようやく完成し、どう活用していくかを考えている中でふるさとテレワークの存在を知りました。
倉庫改修のプロジェクトにおいても、旧でんぷん工場を交流の場として使うことをコンセプトとしていました。交流の場で何か仕掛けたいという気持ちから、2階作業室をテレワークオフィスとして整備することになったのです。

向田氏:テレワークオフィスは2階作業室の契約なのですが、隣の創作活動室や1階フリースペースが空いている時は、利用者の方に『どうぞご自由にご利用ください』とお声がけをしています。2軒隣の「1号倉庫」には大スクリーンやプロジェクターを完備し、大人数でのセミナーなどでご利用いただけます。」
外観は建物が歩んできた歴史を感じさせる。 「1号倉庫」には大人数でのセミナーにも使用できる、かなり広い空間がある。

馬渕氏:クリエーターの方でしたら、ご自身の映像作品を大スクリーンでプレビューできるので、おすすめしています。テレワークで使用していないときには、映画の上映会などを開催することもあります。

―開放感もあり、大人数が集まっても快適に過ごせそうですね。

向田氏:人々が集い、交流する場を前提に設計したかいがあって、今では町民だけでなく、一般企業の方もさまざまなイベントでこの場所を活用してくださっています。ニセコ倉庫邑イベントをきっかけに、新しい仕事関係の縁やつながりが生まれることを願っています。

ニセコはウインタースポーツ以外のアクティビティも、満喫できる環境です。以前1カ月程、東京からこの施設を利用しにいらした企業の方は、仕事の合間にラフティングやバーベキューを楽しんでいました。

落ち着いた表情でインタビューを受ける向田薫氏とニセコ町企画環境課自治創生係 係長の馬渕淳氏
▲左:向田薫氏、右:ニセコ町企画環境課自治創生係 係長の馬渕淳氏

―こちらの料金体制をお尋ねしてもよろしいでしょうか。

馬渕氏:テレワークオフィスとして2階作業室を使用される場合は、1日4,000円(税別)、1週間で20,000円(税別)。館内の他のスペースが空いていれば、この料金で自由にご利用いただけます。

向田氏:1階フリースペースにはカフェを併設し、無料で使える専用のWi-Fiや複合機、モニターを用意しています。高速大容量のWi-Fiインフラを整備しているため、映像を扱うクリエーターの方々にもストレスフリーにお使いいただけるのではないかと思います。

―現在抱えている課題はどういったことですか?

馬渕氏:もっと多くの企業の方々に利用していただくためにはどうしたら良いか、模索中です。ニセコは冬期がハイシーズンということで、宿泊施設がほぼ満室です。冬場のオフィス利用者を増やすための対策として移住体験住宅を用意し、テレワーカーの方々に利用していただくのもひとつの手かと考えています。とはいえ実現可能か否かもまだわからない段階ですが。

4. ニセコのファンを増やす!都心とニセコをつなぐ新しい試み

北海道ニセコ町役場
▲北海道ニセコ町役場

―今後、何か新しく挑戦したいことはありますか?

馬渕氏:体験ツアーを企画したいですね。都心部からニセコに足を運ぶことを考えると、距離の問題で躊躇される方も多いので、まずはモニターとして少額だけ負担すれば来られるようなプランを提案できればと。実際にニセコに滞在し、この土地の魅力を発見してもらえたらと思います。

夜間のスキー場はライトに照らされ、幻想的な雰囲気を醸し出す。 雪深い地域で、白く染まった景観は思わず息をのむ。

―最後に、テレワーカーや企業の方に向けてメッセージをお願いします。

馬渕氏:自然豊かなニセコ町で働くことの素晴らしさを体感して欲しいと思います。ニセコには1年を通じてアウトドア体験を満喫できるスポットがたくさんあります。仕事の合間に心身のリフレッシュができます。

向田氏:ニセコの歴史を象徴するこの建物において、私自身は寮母のような存在として新しい何かを生み出す手助けができたらと思います。例えばクリエーターとビジネスのマッチングをアシストするといった。ぜひ、自然に囲まれて快適にお仕事ができるこの場所にいらしてください。

ニセコ町やその周辺にそびえる羊蹄山。蝦夷富士という名前にに恥じないたたずまい。
▲蝦夷(えぞ)富士と呼ばれる羊蹄山(ようていざん)

お問合せ先
ニセコ中央倉庫群 電話 0136-55-5538

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(参考)平成28年度予算補助事業の取組内容はこちら