和歌山県白浜町

和歌山県白浜町は、総務省が平成27年度に実施した「ふるさとテレワーク推進のための地域実証事業」に、「白浜町におけるパブリッククラウドサービスを利活用した先進的テレワーク推進及び生活直結サービス構築・検証事業」(以下「実証事業」という。)のコンソーシアム構成員として参加しました。実証事業では、サテライトオフィスの整備及び従業員の移住・長期派遣、テレワークツールを利活用したテレワークの有効性検証等を実施。企業の生産性向上における地方のサテライトオフィスの有効性を示す結果を残しました。その後、平成28年には200件以上の視察を迎え入れたという、白浜町の総務課企画政策係の坂本和大主査に、平成29年3月初旬、実証事業についてのお話を伺いました(掲載内容は取材当時のもの)。

―――実証事業に参加したきっかけを教えてください。もともと白浜ではサテライトオフィスの活用に取り組まれていたのでしょうか。

白浜町が所有している「白浜町ITビジネスオフィス」は、平成16年に貸オフィスとして稼働しましたが、当初入居した2社が退去した後、5年以上にわたりずっと空の状態が続いていたんです。スタッフも企業誘致だけをやっているわけではなかったこともあり、当時は白浜町として誘致にはあまり重きを置いて考えていませんでした。
しかし、平成26年に、動物病院向け医療機器や中性電解水等の卸売事業を行っているメディスト株式会社様の進出が決まり、次いでNPO法人IT教育機構様も入居が決まりました。これを受けて「意外と誘致できるものだなと(笑)。これは積極的にがんばっていこう」という話になり、この頃から企業誘致に積極的に取り組むようになりました。

その後、企業の顧客管理や営業支援サービスを情報通信技術(ICT)で提供する米系企業の株式会社セールスフォース・ドットコム様の白浜への進出話やふるさとテレワークの話が出てコンソーシアムが作られた次第です。

インタビューに応じていただいた総務課企画政策係の坂本和大主査
(上)総務課企画政策係の坂本和大主査

―――実証事業ではどんなことに取り組まれましたか。

実証事業ではまず、サテライトオフィスの整備と従業員の移住・長期派遣、それからテレワークツールを利活用したテレワークの有効性についての検証を行いました。進出されたセールスフォース・ドットコム様によって、白浜オフィスで働くことで生産性が向上したことが具体的な数字で明らかにされました。
加えて、ICTを活用し、遠方から白浜に移動したテレワーカーの生活支援に直結するサービス(以下「生活直結サービス」という。)を提供するために、携帯アプリ「白浜リンク」の開発を行いました。これには、代表機関だったNECソリューションイノベータ株式会社様を筆頭に、セールスフォース・ドットコム様や、地元の観光協会、役場、大学や社会福祉協議会など産官学が一体となり関わりました。また、実証後も更なる改良を行い、平成29年5月頃から一般向けに稼働する予定です。一般向けとしたアプリは白浜へ移住してくるテレワーカーだけでなく、地元の住民や観光客にも利用してほしいと思っています。

オフィスの一角がどことなくリゾート風になっている。
(上)白浜町ITビジネスオフィスに入居したセールスフォース・ドットコム社のオフィスの一角

―――実証事業を進めていく中で一番心がけたことを教えてください。

平成16年に白浜町ITビジネスオフィスができたときに入った企業2社は、数年で出てしまったんです。
その理由を関係者たちと考えたときに「オフィスで働く人たちと地元の人との接点がないこと」「白浜に来たことを楽しめなかったこと」などが原因ではと思い当たりました。これらを解決しないと、サテライトオフィスの利用を継続していただくことは難しいのではないかと感じました。そのため、実証事業では、白浜町に進出してきて下さった企業の方々とできるだけ交流を持って、町と企業との接点を作り、休日には白浜町を楽しんでもらえるような取組をしました。例えば、秋に白浜に来られた方には、地元の秋祭りに参加して地元の人とも交流してもらいました。

大変良い雰囲気の中、仕事に打ち込むことができる。
(上)セールスフォース・ドットコム社のオフィスはハワイを意識した内装とのこと

東京から全然知らない土地に移り住んでくるというのは、そもそも住む家がなかったり、家族の生活環境が変わったりなど、やはり大変なことが多いです。そのため、住まいを紹介し、家族で移住するケースではお子さんの小学校の手続きを行うなどを町がサポートしました。また、どこで食事するのか、週末は何をして遊ぶのかなど、働く環境を整えるだけでなく、生活する上で必要な情報を提供し、暮らしに関わるすべての面でお手いしました。町に滞在する方のどんな小さな疑問や不安も僕らが解消できるように関わりを持つ、というこうした取組は実証終了後の今も続けています。

―――実証事業中に行った地元住民と企業の従業員の交流の中で、継続している取組例はありますか。
実証事業中に、地元の子どもたち向けに初めて「プログラミング教室」を開催ました。これは白浜町に進出した企業側が、地域住民との交流の場を設けた事例でもあります。地域住民にも評判がよく、現在も白浜町ITビジネスオフィスに入居している企業が中心となってプログラミング教室を定期的に開催しています。直近では、平成29年1月25日に地元の中学生向けにも実施しました。今後、プログラミングやシステム教育は義務教育になっていくだろうと言われています。それに先駆けて、iPad等を使い簡単に楽しくプログラミングを生徒に教えると同時に、先生方にも教え方を教えているところです。

こうした取組は、企業と住民をつなぐ交流の場になるだけではなく、白浜町の子どもたちがプログラミングやICTシステムについて白浜にいるIT企業から学ぶことにより、将来的にそういった仕事に興味を持つ子どもたちが増えていく可能性があります。地元の子どもたちに、「IT関連の仕事は東京に行かなくても、地元で続けていける」という感覚を持ってもらうことも大切で、例えば、大学進学で地元を離れても、自分のやりたい仕事が地元でできれば白浜へ帰ってくることにつながります。それが人口流出や少子高齢化の歯止めに繋がっていくのではと期待しているところです。

―――実証事業を行った成果としてはどのようなものがありましたか。

実証事業で白浜町に進出した企業からは、ここに来てから社員の業務成績は確実に上がり、それが実証終了後の今も続いているというお話を聞いています。地方のサテライトオフィスで働くことで、生産性が向上したというのはふるさとテレワークを実施した企業にとって大きな成果ではないでしょうか。また、自治体にとってはサテライトオフィス活用の具体的な成功事例が実証事業によって生み出されたことが成果です。この事例が呼び水となったようで、実証終了後にも白浜町ITビジネスオフィスに新たに進出した企業があり、現在ではオフィスが満室です。そこで、現在、2つ目のオフィスを作ることが決まりました。場所も決まったので来年度中には完成する予定です。

海が見えるなど、眺望もよい。
(上)オフィスの窓からは白浜の海が臨める

―――実証事業が終了し、平成28年度に入って変化したことや工夫されている点はありますか。

企業誘致が進んでいるので、視察の件数がかなり増えています。昨年1年間で200件を超える視察がありました。企業様の中には、オフィスさえあればすぐにでも白浜町に進出したいとおっしゃっているところもあります。それもあって第二のオフィスを作ろうという話になった次第です。

―――視察に来られるのはどのような企業でしょうか?また、今後の展望をお聞かせ下さい。

やはり、IT系の企業が圧倒的に多いですね。IT系に限らず今後も視察に来られる企業様へのアピールは続けていく予定です。昔から大きな雇用が生まれるので、工場を誘致してほしいといった声が住民からはあります。しかし、白浜はやはりまだまだ田舎で流通も悪く工場誘致には課題も多いです。一方で、平成26年から国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT)と白浜町が協定を結んで大災害ネットワークを整備し、町内に構築しています。白浜には将来災害が発生しても、つながり続けるネットワークというものがありますのでIT企業にはメリットが大きいと思います。従って、今後もIT関連企業を中心に誘致をしていきたいと考えています。白浜は観光地でもあるので、並行してホテル等の誘致には取り組んでいきたいと思っていますが、もうしばらくはITの流れが続くでしょうね。

―――最後に、企業に向けてのメッセージをお願いします。

東京で働いていると、片道1~2時間満員電車に揺られて通勤するのは普通です。一方、例えば白浜に移住した場合、マイカーで10分以内にオフィスに到着することができます。海も山も川もきれいですし、通勤のストレスなどは全くありません。そんな環境で仕事ができたら、働く人々にとってもプラスになり、ワークライフバランスもとれると考えています。また白浜は東京から飛行機で1時間という好立地なので、朝東京に向かい、夕方白浜に帰ってくることも可能です。

10年以上前に白浜町にて操業を開始し、地元採用にも大きく貢献していただいているクオリティソフト様(旧株式会社SRI)が、昨年12月に東京に置いていた本社を白浜に移し、自社ビルを整備。平成29年1月1日より、クオリティソフト株式会社として発足しました。また、先ほどもお話した通り、白浜町ITビジネスオフィスも満室となりました。このように現在、白浜町にIT企業の集積が始まっています。悩んでいる企業様はぜひ一度白浜へお越しください。

――ありがとうございました。

(参考) 登録自治体情報:和歌山県白浜町