徳島県那賀町

【取材日:平成30年2月7日】

ドローンで地域再生、徳島県那賀町の「もんてこいテレワーク整備事業」

小学校跡でドローン関連事業を行っている。
さまざまな分野で活用が広がる小型無人機ドローンを地域再生の起爆剤にしようとする自治体が徳島県にあります。平成の大合併で那賀川流域の山村5町村が合併して生まれた那賀町です。人口は過疎の進行で7,900人しかいませんが、面積は東京山手線内側の約10倍に当たる700平方キロ。その広さをドローン関連事業に生かそうというわけです。平成28年度の総務省「ふるさとテレワーク推進事業」をきっかけに、上那賀地区の小学校跡にドローンを活用する企業でつくる「一般社団法人UAS多用推進技術会」を誘致しました。技術会徳島支部の角南泰弘(すなみやすひろ)理事に現在の活動状況や今後の目標を伺いました。

目次

1. ドローンの適地と見定め、サテライトオフィスの開設を決意

2. 技能スクールからはこれまでに30人が卒業

3. 文化祭で地元住民と交流、将来の夢は地域貢献

4. 異業種交流、移住の受け皿などメリットがいっぱい

5. 本事例についてのお問合せ先

1. ドローンの適地と見定め、サテライトオフィスの開設を決意

澄んだ空を悠々と飛ぶドローン。

―那賀町の「もんてこいテレワーク整備事業」に応じ、小学校跡地に進出を決めた理由はどこにありましたか。

那賀町は過疎の山村ばかりが合併して生まれた自治体で、面積は徳島県内で2番目に広いのですが、人口密度は最小です。しかし、その分豊かな自然が残り、山村ならではの人情も厚い場所です。サテライトオフィスを置くのに魅力的だと感じ、平成28年にオフィスを開設しました。那賀町はドローンを活用する徳島県版の地方創生特区に選ばれて以降、国が進める荷物配送実証実験の場になるなど、ドローンの町として多彩な活動を展開しています。ちょうどこちらが徳島、兵庫の両県でドローン活用技能スクールの開設を目指していたこともあり、町と技術会双方の意向がマッチしたわけです。

―那賀町はドローンの飛行に適した場所といわれますが、どこがいいのでしょうか。

徳島県で一番の長さを誇る清流、那賀川。吉野川よりも長い。
▲那賀町には絶景を誇る那賀川の渓流「鷲敷ライン」。四季を通じ豊かな表情を見せてくれる

都市部と比べ、航空法の規制が少ないことが理由の1つで、障害物や人家が少ない那賀町の上空は、ドローンの飛行にぴったりです。山に囲まれた地形で風の影響を受けにくい点は、初心者向けの講習に適しています。それに加えて「日本の滝百選」に選ばれた大釜の滝をはじめ、木沢地区の巨大な風車、紅葉の名所として知られる高の瀬峡など、のどかで美しい風景を空撮できる場所がたくさんあります。日本の原風景ともいえる農村や山村、自然の姿は、四季折々の顔を見せ、本当に素晴らしいと思います。那賀町で撮影した動画や写真にはきっと、都会の人も魅せられるはずです。

2. 技能スクールからはこれまでに30人が卒業

校庭でドローンを飛行させられるのは小学校跡ならではである。講習は教室で。小学校跡の利点を最大限に活かしている。
▲講義と実地教習を同じ敷地内で行える。講習の費用及びスケジュールについては、一般社団法人UAS多用推進技術会(UMTA:アムタ) 別ウィンドウで開きますにお問い合わせください

―ドローン活用技能スクールを開講していますが、これまでの活動状況を教えてください。

スクールは4日間の日程で年に5、6回開催しています。だいたい2カ月に1回のペースでしょうか。いろいろな企業から参加した人たちが、ドローンの操縦技術などをマスターしているのです。サテライトオフィスの事務所とスクールの教室は3階建ての小学校跡の2階に設けました。都会のスクールだと、講義と実習を別の場所で行うため移動が大変ですが、ここでは建物で講義をし、実習を目の前のグラウンドでできます。雨の日は体育館を会場とすることも可能です。これまでに約30人が受講し、巣立っていきました。まだまだ受講人数は多くありませんが、ドローンの活用が広がるにつれ、受講者が増えると期待しています。

―スクールの運営はどのようにされていらっしゃるのでしょう。

兵庫県の南あわじ市から移住してきたスタッフが1人います。兵庫県明石市の技術会事務局で働いていましたが、今は那賀町のサテライトオフィスを任せています。ただ、スクールの受講生が多いと、とても対応できません。そこで、徳島県内で講師をするスタッフや兵庫県のスクールから応援のスタッフが駆けつけてくれます。毎回、5、6人が応援に来てスクールをこなしているところです。実は私も隣の阿南市出身で、阿南市にある徳島支部から応援に来ています。

3. 文化祭で地元住民と交流、将来の夢は地域貢献

インタビューに応じていただいた一般社団法人UAS多用推進技術会徳島支部の角南泰弘理事。
▲一般社団法人UAS多用推進技術会徳島支部の角南泰弘理事。手にしているのはドローンのプロポ(プロポーショナル・システム)

―スクール以外にはどんな業務をされていますか?

ドローンで撮影した映像の編集や加工をしています。これまでは那賀町で開かれるイベントを記録し、那賀町役場のPR資料などを作成してきました。那賀町では基幹産業の農林業などさまざまな分野でドローンの活用が始まろうとしています。土木関係の安全確認、施設の劣化点検、農薬散布などです。周辺の阿南市や海部郡などでも同様でしょうから、普及に合わせて事業を拡大することを考えています。拡大する事業に応じ、新しい職員を地元採用することで、人口流出に苦しむ那賀町に雇用の場を提供していきたいですね。雇用さえあれば移住希望者はたくさんいると思います。

―地元の人や地域の企業と交流はありますか?

平成29年末に上那賀地区の産業文化祭に参加し、教室を開放してシミュレーターによる仮想フライト体験やホビードローンの体験飛行、ドローンに関するクイズなどをしました。地域の子どもたちには、本当に好評でした。地域の人たちを対象とするドローン教室も開講し、親しくなることができました。少しはドローンの浸透について、お役に立てたのではないかと自負しています。これからも地域と密接な関係を築き、ドローンをPRするだけでなく、地域に貢献していきたいと思います。住民の高齢化が進んだ地域ですが、70代で趣味はドローンという人を育ててみたいと夢を膨らませているところです。

―現在、サテライトオフィスの運営で抱えている悩みがあったら教えてください。

廊下は小学校であったことを感じさせる。

那賀町は宿泊施設や飲食店が役場のある鷲敷地区に集中しています。鷲敷地区は合併前の旧5町村のうち、最も東の最下流部に位置し、上那賀地区からだと車で1時間近い距離があります。上那賀地区周辺は宿泊施設が少なく、応援のスタッフが来た際、不便を感じているのです。小学校跡の建物は3階が未使用のまま。できればそこへ本部から派遣されてきたスタッフが寝泊まりできる場所を設けてほしいと考えています。

4. 異業種交流、移住の受け皿などメリットがいっぱい

ダム湖は付近にアジサイが咲き誇るため、「あじさい湖」と呼ばれている。
▲昭和36年竣工の県営の川口ダム。豪快な水しぶきを上げて噴出する放水風景は圧巻。桜や紫陽花など四季折々の風景が楽しめ、ダム湖の周辺には、温泉や美術館、キャンプ場などの施設がある

―ふるさとテレワークの利点について、どうお考えでしょう。

サテライトオフィスを置くことでそれぞれの地域のニーズに合わせた運営ができることが大きいです。小学校跡にはまだうちしか入っていませんが、新たな企業がやってくる可能性があると聞きます。どんな企業になっても異業種で交流できるのが、シェアオフィスに入るメリットの1つでしょう。過疎地域の悩みは移住者の受け皿になる仕事がないことです。田舎暮らしにあこがれる人は都会で増えていますが、都会にいないと仕事がないという理由で移住をあきらめる人や、田舎から都会へ出ていく人が少なくありません。テレビ会議などを使えばサテライトオフィスで都会と変わらぬ仕事ができますから、そうした人々の受け皿を作る場所として期待できるのではないでしょうか。

―逆に欠点はどこにあるでしょうか。

うちのようなスクール運営だと、全ての業務をサテライトオフィスだけでまかなうことはできません。このため、どうしても近隣のオフィスからスポット的に人を派遣する必要が出てきます。高速インターネット回線の整備も欠かせません。上那賀地区はまだ、光回線が通っていませんから、1日も早く整備してほしいと考えています。田舎は都会のように通信量が多くて速度が低下することはありませんが、光回線になるとサテライトオフィスでできる仕事が一気に増えます。

―最後にふるさとテレワークの利用を考えている個人や企業に対し、何かメッセージをお願いします。

ふるさとテレワークとひと口にいっても、運用方法や業務形態はさまざまです。新しい環境に移ると、刺激を受けて好結果が出ることもあれば、うまくいかないときもあるでしょう。でも、実際に稼働させてみないと分からないことが多いのも事実です。仕事環境や運営方法についてそれぞれがしっかりとしたビジョンを持ちながら、挑戦してみてはいかがでしょうか。

お問合せ先
那賀町まち・ひと・しごと戦略課/ドローン推進室 電話 0884-62-1184

那賀町ドローン推進室ホームページ 別ウィンドウで開きます

(参考)平成28年度予算補助事業の取組内容はこちら