山形県高畠町

廃校を利用した地元密着型サテライトオフィス

総務省が平成27年度に実施した「ふるさとテレワーク推進のための地域実証事業」に参加した山形県高畠町。「廃校再生ふるさとサテライト・オフィスプロジェクト」という事業名の下に、5団体が結集しました。施設の名前は「熱中小学校サテライトオフィス」。2階にサテライトオフィススペースを設け、1階では、市民参加によるオープンキャンパスを開催。イベントと連携しながらのPR活動の効果も現れ、地元雇用も実現しました。平成28年11月中旬、高畠町企画財政課の栗田英徳主事に、この事業についてお話を伺いました(掲載内容は取材当時のもの)。

廃校が生まれ変わった「熱中小学校サテライトオフィス」

<既存施設の有効活用と学びの場としての存在を活かした廃校プロジェクト>

―昨年度のふるさとテレワーク推進のための地域実証事業に、参加されたきっかけは何だったのでしょうか。

この辺りでは、都市部と違って自己の教養を高める機会が少ないと考えている社会人が多く、そこをどうにか変えたいと思っていました。そこで、教育の場だった廃校を利用して何かできないかと考え、社会人向けのオープンキャンパスや企業向けのオフィスなどを提供する、「廃校再生プロジェクト」という構想を独自に立ち上げました。ちょうどその頃、総務省がふるさとテレワークの推進事業を行うということを知り、この熱中小学校でのオフィスなら、サテライトオフィスという趣旨にも合致するのではないか。そう考え、事業に参加することにしました。

インタビューに応じていただいた高畠町企画財政課の栗田様

<オープンキャンパス「熱中小学校」とサテライトオフィスとの相乗効果>

――熱中小学校というネーミングも素敵ですが、オープンキャンパスとオフィス、どのような関係になっているのでしょうか。

熱中小学校は、首都圏で活動する経営者や研究者を講師に招き、地元の人たちが集まって講義を聞くオープンキャンパスのことで、1階がその場所となっています。また、講義は遠隔地からでも受講できるように行っています。その他、1階にはシェアスペースもあります。

講義中の様子。多くの人が集まっている。

一方、学校の2階部分がサテライトオフィスになっています。

建物の中は開放感がある。
室内も広々としている。

 
――今までこういう施設がなかったところに、廃校を活用して、熱中小学校とサテライトオフィスをセットで作った。地元の人が気軽に立ち寄る建物の中に、企業のオフィススペースもある、という点が非常に新鮮です。普通は懸念されるところですが、その部分が魅力のようですね。

やっぱり熱中小学校というのがすごい効果だと感じています。オフィスに入居している企業の中には、きっかけは、熱中小学校の講義に参加した方もいらっしゃいます。1階で講義を受けた後、2階へ行ってみたら、こういうオフィスがあるということを知った。そういうところが大きいと思います。入居後に、熱中小学校での取組に参加する企業もあります。

――やはりそこが大きいですね。高畠町は、熱中小学校とうまく組み合わせたところが一番大きなメリットになったようですね。計画段階から入居する企業はあらかじめ決まっていたのですか。

廃校再生プロジェクトの構想の当初から、参加者の横のつながりで声をかけていた企業はありました。その後、ふるさとテレワーク事業に参加することが決まってから、声をかけて入居が決まったところもあります。また、先ほど申し上げたように、熱中小学校の講義をきっかけに入居された企業もあります。

<サテライトオフィスの運用を継続、移住と地元雇用も実現、>

――昨年度入居していた企業は、全部継続されているんでしょうか。

ふるさとテレワークに参加していた企業は、1社解約されました。ただ、継続されている企業もいますし、今年度新しく入居された企業もあります。大変嬉しかったのは、実際当地へ移住された方がいらっしゃったことです。

――実際に移住されたということは大きいですね。現在入居している企業は、何社ですか。

2階のサテライトオフィスを利用している企業が4社の他、1階のシェアスペース等を利用している企業もいるため、現在利用している企業数は全部で8社(※掲載時平成29年1月末時点では12社)となります。サテライトオフィスを利用しているデジタルデザインさんは昨年度から継続している東京の企業ですし、仙台の建築模型の企業も入られています。

鉄道模型のレールが敷かれ、ストラクチャーも設置されている。
クラス名の看板に社名を入れ、再利用している。

 
また、「360度」という企業は、ドローン関係の企業で、熱中小学校が始まった時から入居しています。地元の山形大学を卒業したばかりのベンチャー企業ですが、最近はいろんな自治体ともやりとりをされていて、地元の農業委員会などでもドローンを活用した取組で紹介されています。

――地元の雇用は、どのくらいあったんですか。

20名前後ありました。今も続いている方はいらっしゃると思いますが、当時よりは減っていると思います。

――一番苦労したことは、どんな点ですか。

町としては、初めての事業でしたので、どういう風にPRしていけばいいのか、手探りの状態でした。加えて、移住されてくる方の支援体制、例えば住む場所を決めるために不動産を探すところから始めないといけなかった点です。実証事業では、地元の人の雇用を増やすということがありましたが、自治体からの呼びかけも必要だったので、参加者を探したりすることも苦労したことです。

<メディアや各地から問い合わせ、今年度は補助金を創設>

――心に残ったことはありますか。

いろんなところから注目してもらえたところです。メディアから取材されたり、突然、京都や富山から電話がきたり、いろんな自治体さんからも問い合わせがきたりしました。そういうのは今までにない話でしたので、今までになかったことをしたんだということをじわじわと実感しました。

――ところで、今年度に入ってから、改善されたことや新しく始めた取組などは、何かありますか。

町で予算をつけて、サテライトオフィスに入居するための補助金を始めました。具体的には、基本月額5万円の家賃と別途かかる光熱水費の合計に対し、月3万円を上限とした1/2の補助をします。

――入居している企業にとって、光熱費が1万円かかったとすると、計6万円のところを3万円で利用できるということですね。

はい。通信費は別です。いろいろ考えてみたのですが、やはり、入居を決める上では、金額的な面が一番大きいところだと思いました。

――予算を取るのに反対はなかったのですか。

ありませんでした。意外とすんなりと決まりました。やはり、ここまで走り出してきた事業なので、失速させるわけにはいかないだろうということで、意見がまとまったんだと思います。

――昨年度苦労された住居というのは、どうなりましたか。

そこは今でも課題になっているところです。サテライトオフィスに限らず、移住について、高畠町はまだそんなに進んでいないところだと思います。住居も含めて。アパートはあるんですが、駅前や街中、役場の周りに集中していて、施設のある時沢周辺には、あまりないんです。

――最後に、進出先を探している企業へのメッセージをお願いいたします。

一番は、熱中小学校とのコラボレーションを感じてほしいです。さまざまな業界の方、いろんな業種の方の話でつながっていく、交流の広がりがあるというのがひとつです。今は、地元の時沢葡萄という品種があるのですが、地元の農家の方々のご支援を受け、熱中小学校の生徒さんたちと耕作放棄地を再生させようというプロジェクトがあります。地元ワイナリーの社長を講師にして、みんなで再生した畑でできた葡萄でワインを造ろうというものです。

後は、東京方面からは新幹線1本で来られるアクセスのよさ、それに補助金があります。これからも、ぜひ多くの方に利用してもらいたいです。(終)

(参考)登録自治体情報:山形県高畠町